開発最前線 vol.2 佐見津 麻希

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アルカリ電解水を使用する新しい金属加工添加剤の開発に挑戦

ホットメルト接着剤は、約130~180℃の熱で溶かして塗り、冷やし固めて接着するタイプの接着剤。高速生産が求められる市場で、溶剤系や水系に代わる接着剤として使用量が増加している。MORESCOは、衛生材料分野では唯一の日系ホットメルトメーカー。紙おむつなどの衛生材料用ホットメルトの開発に携わっている佐見津麻希に、研究開発にかける思いを聞いた。

佐見津 麻希

研究テーマ 高性能でありながら汎用性の高いホットメルト接着剤の開発に挑戦

ホットメルト接着剤は、紙おむつや生理用ナプキンなどの衛生用品をはじめペットボトルのラベル、はがきの情報保護ラベル、住宅の断熱材、自動車の内装材の接着など様々な分野で使われています。その中で、衛生用品の1つである紙おむつは、不織布、ポリエチレンシート、ティッシュ、ギャザー部に用いるゴムなど、様々な種類の材料をホットメルト接着剤で貼り合わせて作られています。使用される部位によって、風合いや接着力、保持力など異なった性能が必要とされるため、さまざまなホットメルト接着剤が使用されています。一方で、在庫管理の効率化や誤投入防止のために、使用するホットメルト接着剤の種類を減らしたいというお客様の要望もあります。そうした要望を受けて、原料となるベースポリマー※1、粘着付与剤※2、軟化剤※3の配合比率や原料の種類を選択し、高性能でありながら汎用性のあるものに導く研究を行っています。

研究の難しさ 広い温度域で性能を維持できる製品の開発

ホットメルト接着剤は多様な環境下で種々の材料を接着する接着剤として使われるため、過酷な環境にも耐えられるものを開発しなければなりません。ホットメルト接着剤は熱可塑性※4化合物から成るため、温度に影響されやすいというのが一番の弱点。紙おむつ用でも、日本全国で使用しようとすれば、北海道から沖縄まで幅広い温度域で性能が変わらないものを作ることが求められます。高温から低温までの温度に対する性能を維持するために、最適な配合比率と最適な材料を見つけていく。いずれの材料も種類がかなり多く、最高の性能を出すための黄金比率を見つけ出すところに研究開発の難しさと面白さがありますね。

独自性 日系メーカーならではの、お客様の視点に立った製品開発

MORESCOは、衛生材料分野では唯一の日系ホットメルトメーカーです。ホットメルト事業部の基本姿勢として、顧客の視点に立つということがあります。このため、できる限りお客様のご要望を直接お聞きして、開発スピードやきめ細かい対応につなげています。これは、外資系メーカーにない強みだと思っています。たとえば、開発期間が1~2カ月、時には2週間といった短納期で要求されることもあります。お客様の要望に応えるため、当社独自に作り出しているデータベースやノウハウを活用しながら検証を重ね、短期間での改良や開発を成し遂げています。また、最近では市場の低価格化が進み、安価材料を使用するために樹脂臭の強いものや熱安定性の悪いものになりがちですが、日本品質を誇れるような製品開発を常に心がけています。

課題解決 どんな難題、短納期でも、「できない」とは言えない

入社以来、材料の供給制限や震災など多くの問題が発生しました。市場開拓する際も、高度な性能を求められたり、ユーザー様での実機品評価日程が決まっているため短納期での依頼が入ったりと、常に難易度は上がっていきます。どんなに難しくとも「できない」とは言いません。お客様が要望されることに応えたい。そのためには、時間がある限り何度も検証を重ね、時には昼夜問わず研究し続けたこともあります。そのような検証を重ねてできた製品を、お客様から「いいね」と言っていただいたときは感無量の思いです。

仕事への姿勢 分からないことを分からないままにしない

研究開発で心掛けているのは、まずお客様のために何ができるだろう、何が良いのだろうと常に考えることですね。そのために、お客様が本当に望んでいることは何か、言葉の裏にあるものを読み取れるように努めています。また、お客様に対しても社内でも、分からないことを分からないままにしないことも大切。分からないことがあればすぐに聞くように、調べるようにしています。そうしないと技術も、自分自身も成長できないと思うからです。

そして次に、全てを疑うこと。ゴールを決めて一つの結果が出たとしても、なぜこうなったのか、本当にこうなのか、何度もくり返し確認します。そうすることでできること、できないことがより明確になり、自信をもってお客様に対応できるようになりました。夢は、自分の開発したホットメルトが、世界中で使われるようになること。そのために、材料の知識やブレンドの技術をもっともっと深めていきたいです。

※1 ベースポリマー…ホットメルト接着剤の性質を決める成分。
  合成ゴムやオレフィンなどが使用される。
※2 粘着付与材…タッキファイヤと呼ばれ、糊のベタつき感を発揮させる成分。
※3 軟化材…オイルやワックスなどが使用される。
※4 熱可塑性…熱を与えると固体が溶けて液体になる現象

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vol.2 ホットメルト事業部 ホットメルト開発部 商品開発課 佐見津 麻希

日系メーカーの誇りを持って、ホットメルトの難題に挑む
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課題解決
仕事への姿勢